―出会い―

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古くなった扉は、引っ掛かりながら派手な音をたてて開いた。 ムワッと広がるカビと埃の臭い。なんだか靄がかっているようで、部屋の隅々まで見ることができない。 中に入って部屋を把握する。 理科室独特の大きな机と机の間に蛇口のある机が四組並び、辺りには割れたビーカーなどが散乱し誰かが暴れた後のようにも見えて不気味だ。 コトネ『カエル…カエル…』 なるべく周りの物に触れないように標本を捜す。 しかしこの部屋にはないようだ。 ふっと、入った時には気付かなかった黒板横にあるドアが目に入った。 教卓用の大きな机を横切り、そのドアの前に立つ。いつの間にか日が暮れて自分の手元しか見えなくなっていた。 携帯電話のライトを照らしながらドアに手をかけた。
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