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ビールを飲みながら、手離した方が永岡も幸せになれるんじゃないかと一瞬ふと脳裏をよぎったが、直ぐに微塵もなく消え去った。
俺が好きなのは永岡以外だれでもないのだ。
手離すなんてただのエゴに過ぎない。
「俺がお前を好きなのに変わりはない。言い訳になるだろうが、お前と付き合っている事を理由にして断るのは嫌だった。だからって、理由も付けずにただごめんだけいうのも笹脇を傷付けそうで言えなかったんだ。だから、考えさせてくれって言ったのは傷付けない言い方をさがしたかっただけで、永岡を諦めようなんて……」
自分で意味を理解する前に溢れる言語の波。永岡もキョトンとしている。
「あ……ごめん…」
「……馬鹿。不安にさせてんじゃねぇよ」
「本当に、すまなかった…」
「上山さん…、そんなことなら初めからそう言ってくれれば良かったんすよ」
「笹脇……聞いてたのか」
「俺、傷付いたりしないっす」
嘘吐け。おもくそ傷付いてるじゃねぇか。
何も考えずに考えさせてくれなんて言って、傷は広がっていってしまった。
今、俺は何をするべきか。
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