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永岡を横目で見れば、無表情。
あの顔だと拗ねてる。
「笹脇、俺そろそろ準備しないと佐伯にまたなんか言われる。お前もそろそろ仕事しろ?レジに出ろとは言わない、飲み物の補充と在庫確認たのむ。できるな?」
「はい」
「行ってこい」
笹脇を奥へやったのはいいが、ここでどうする訳にもいかない。
「ちょっと外行こうか」
「…………」
だんまりか。
手を取って裏口から外に出た。
「ほら、顔見せて」
「……ヤだよ。今、汚い顔してる」
「そんな事ねぇよ」
「ヤだ……」
「はぁ……。特別はお前だけだよ、永岡」
「本当に馬鹿だよ。俺の我が侭を何も言わないで全部受け入れて、俺を好きって言って……常盤は馬鹿だ!!」
「しょうがないだろ、子どもの頃から頭はいい方じゃないんだ」
自分で言っていて少し虚しかったけど、本当の事だ。と、おもむろに腰に腕が回され、体が近付く。
「あ……今シャツ濡れてる」
「いいよ……はぁ、怖かった」
「俺のせい……だよな」
「そうだよ。嬉しかったあの気持ちは無駄になるのかって思ったら、無性に寂しくなってさ」
「ごめんな」
空中をさまよっていた腕を永岡の体に巻き付けて、片手は頭に置いて身を寄せあった。
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