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「もう大学に戻る時間過ぎてんじゃねぇの?」
「かなり前にな。たまにはサボってもバチは当たんない」
「高校時代に戻ったみたいだな」
「よくサボってたしね。常盤…俺の事手離さないって約束しろ?」
「当たり前」
「キスしろよ」
「今日記念日じゃねぇべ?」
「今月1のはなくなってんじゃないかって思ったろ?調子乗んなよ。今日だけ特別だよ」
体を離されたかと思えば軽く肩にパンチをくらった。痛くはなかったが殴られた部分をさすりながら永岡を見つめた。
「分かった……」
「ん……」
壁にもたれかかって目を瞑って待っているその状況はベタで。だが、真剣な表情が俺を緊張させた。
壁に手をついて体を少し曲げて口付ける。
唇を離そうとすれば首に腕が回って再びくっついた。
短いではあったが、不安だった時間を埋めるように、幾度か角度を変え何時もよりは少し長いキスをした。愛しい。
「っふ……、ぐぁぁ…恥ずかしい」
「やれっつったのお前だろ、長引か「うわわ、止めろよ…。あれは…体が勝手に動いたんだよ」
本当に可愛い奴。
真っ赤になった頬を撫でてみれば、口許を緩める。
「あ……時間くったな。そろそろ中戻るわ。お前も大学戻れ。タクシー拾ってやるから」
「言われなくても行くよ。大丈夫、自分で呼ぶから。早く中行けよ。後輩に怒られちゃ先輩の威厳もなくなんよ。じゃな」
「おう」
「あ、これ…オマケ」
そう言うと頬に温もりが触れて離れた。
一瞬時の流れが止まった様に思えた。
「じゃあ」
「ああ」
はにかみ笑いを従えて去って行った永岡はあまりにも綺麗で。
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