一歩目、冷たくても暖かさを信じたい

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一歩目、冷たくても暖かさを信じたい

春にしては肌寒い、しかし昔の春ならば通常だったであろう気温が、外の空気を包んでいた。 冬にお世話になった暖房器具、さようなら! 涙を飲んで、もう入らなそうな押入に食べさせる。 しかし当人は、食べるほうが涙を飲んでいることには気付かない。 吐くんじゃないぞ、その一言を残されて、口を強引に閉められてしまった押入は・・・。 「片付けおわったよー」 母親であろう女性へ疲れているという雰囲気全開で語り掛ける、それより一回り小さい少女。 あらそうなの、じゃあおやつにしましょうか、そんな言葉を言い切る前にーー 『ガララララララララン』 派手な音を立てて押入は、中の物を吐き出してしまった・・・。 ちなみに、振り向いた少女の顔は、引きつれるだけ引きつっている。 そんな少女の背中に一息のため息と、冴えない調子の一言をその母はぶつける。 「思ったとおりね、早すぎ。きちんと整理してきなさい。ボウシ」 その言葉に押されて、ボウシと呼ばれた少女は自分の部屋へと歩を進める。そして思いつく。 まだヒーターは出しておこう、と。
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