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そうだ、ボウシは閃いてしまった。
「おーい、カっちゃんー。こないださぁ、何かなくしてなかったぁー?」
満面の笑みで言ってみる。実際のところ、何かなくしてたなんて知るはずもない。
記憶にありませーん。
『ビクッ!』
反応があったぞ!
な、なんか知らないがなくし物があったみたいだ・・・。
そう、ずばりカサはなくしていたのだ、野球のグローブのグリスを。しばらくは大丈夫なので、探しているようには見えない程度に辺りを彷徨っていたのだが、感付かれてしまったのか・・・。
いや、とここで自分の発想の甘さに気付くことができた。
流石オレ、ボウシと頭の出来が違う。
あの憎き木偶の坊め、フフフ、甘い。甘すぎる。
こないだとは、オレが「最近」なくし物をしたというニュアンス。
オレが無くしたと理解したのは一週間前。
「探してなかった?」
と聞けばオレももっと動揺したところだが。
この日本には、白黒していないグレーな言葉が多いから、騙されやすい。
これは、鎌を掛ける必要がありそうだ・・・。
「はぁ? 何時の話してんだよ? 最近は何もなくしてねーよ」
え? ボウシは愕然とした。反応は確かだったのに・・・・・・、でも・・・。
やっぱりそうなのか、相手にしてられるか!
カサは、そう心の中で罵って、中断してしまった勉強を続ける。
カサは気付かない。
「何時の話してんだよ」
「最近は何もなくしてねーよ」
この二言が、なくし物があることを肯定していることを・・・。
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