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俺は、見たままの様子を言う。
心の中は見えない。
しかし、幸せそうだったのは確かだ。
ほんの少し前の事件を、窺わせない程度には。
「へぇ…箕坂さんは?」
その答えを聞いたノアは、立て続けに質問をしてくる。
俺は、それには小さく頭をふった。
「いなかったよ。
来るかと思ったけどな。
まぁ、普通に考えたら近付かないと無理だしなぁ」
“ずいぶん遠くから”様子を窺っていた俺は、しみじみと言う。
マサイ族並みの視力をもっている俺には、考えられない悩みだ。
「そっか」
ノアはそれだけを言うと、黙って紅茶を飲む。
「飛鳥。
あなたは見つからなかったですよね?」
そして、次に俺にそう聞いてきたのは、澪だ。
心配そうな色が、その瞳に宿っていた。
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