2037人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
彼の言葉に思わず、涙が零れた。
彼はいつもそう、欲しい言葉をくれる。
「もっと違った形で君とは出逢いたかった。
そしたら、普通の恋人同士になれたかもしれない。
ごめんな」
「どうしてあなたが謝るのーっ…!」
わたしが泣きじゃくりながら怒ったように言うと、彼はおかしそうに笑い声を上げた。
それから、その笑顔を崩さないまま続ける。
「でも、俺は少し満足してるんだ。
こんな形で出逢えたからこそ、俺は一生君から忘れられることなんてないだろ?
さっきは忘れて、なんて言ったけど、本当は忘れて欲しくなんかない。
だから、俺はずっと君の心の中に居られることを嬉しく思うよ」
だけどね、と言って彼は諭すように笑う。
「過去を覚えていることと、過去に囚われることは違う」
最初のコメントを投稿しよう!