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そう言って彼は、そっとわたしの身体を抱きしめた。
頭を撫でる以外のスキンシップはこれが最初で最後なんだろうな、とわたしは頭の片隅で淋しく思った。
不思議と抱きしめられている感覚はあって、体温も衣服を通じて伝わってきている。
あの彼に自分が抱きしめられているだなんて、なんだか信じられなかった。
そしてまた涙が零れてくる。
まるで洪水のようだ。
だけど、心はとても温かい。
わたしの犯した罪を、彼は許してくれていた。
「ごめんなさい。
あなたの人生を終わらせてしまって、わたしだけくだらないことに悩んでのうのうと生きて…、」
「くだらないだなんて言うなよ。
君にとっては大きな問題だろ?
でも、もう大丈夫。
これから先また壁にぶつかっても、今の君なら乗り越えられる。
俺が居なくても…、」
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