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今、あたしには気になっている人がいる。
気になっている、というのは恋などという乙女チックなものでなく、ただ単純に興味を持っているという意味である。
そのあたしが気になる彼とは、二年生のときからのクラスメートで、先月に席替えをしてから隣の席になっていた。
彼はもともと普通の人間とは少し違っている生き物だった。
なんというか、異色を放っているのである。
繰り出される言葉は意味不明なようで、いつも的を得ていた。
見つけにくいようなものごとの真相を、彼は見透かすのがとても早い。
だからといって、頭が切れる訳ではなく、テストの成績は普通より低め。
しかし彼の一日の授業のほとんどは睡眠に使われているので、成績があまりよくないのも頷ける。
喋らせれば舌ったらずでのんびりしていて、普段の動きも鈍い。
だけど彼はサッカー部の主将で、部活のときは一変、全国大会まで部員たちを引っ張った。
とにかく、彼は変わっていた。
言うことも、することも、同年代の男の子たちとは大きく違っていて、普通、というものから逸脱していた。
しかし今上に挙げたことが、あたしが彼を気にしている理由なわけではない。
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