子守唄(現)

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土地柄か寺の方針か、通夜は斎場や自宅ではなく、寺のお堂で、棺の前に卓を設け酒を盛りながら蝋燭の灯を絶さないように朝を迎えるらしい。 他の親戚は交代で近所にある自宅に帰ったりもしていたが、喪主の祖父と私たち家族は寺の二階の休憩所に蒲団を用意してもらい、交代で休むことにした。 交代といっても、祖父と母は突然の祖母の死にすっかり気落ちしていて傍目にも疲れていて、妹はまだ高校に上がったばかり。 零時になった頃、三人には先に休むよう勧め、私は残って家族を代表する形で他の親戚と飲みながら過ごすことにした。 待たせてしまった罪悪感もあって気合を入れて臨んだのだが、運悪く親戚の中でも酒癖の悪い人に捕まった私は、四時を回るころにはその人の酒の相手をするのにも、他の親戚に気を遣うのにもすっかり疲れてへとへとだった。 仮眠をとって戻ってきた親戚の何人かに蝋燭の番(と酔っ払いの相手)は任せて休むように言われ、数時間後の火葬のことも考え厚意に甘えて二階に上がった。
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