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学生の時分、板橋の、二階建てアパートの最上階の角部屋に住んでいた。
私はそのワンルームの中央、ローテーブルの前の床に、玄関を背にして座っていた。
視線か気配か。
顔を上げると、窓の外に見える向かいのビルの非常階段に、特徴のない面立ちの黒いスーツの男が佇んでいた。
その男と目が合った、と思うと、そいつはぐにゃりと歪んで、杖をついた老人に姿を変えた。
若者に。子どもに。女性に。
ぐにゃり、ぐにゃり、ぐにゃり。
歪みながら、そいつの身体は伸びて大きく弧を描き、部屋の真上に伸びてきた。
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