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ドアが開く。 「寒い」 また言ってしまった。 背中を丸めながらバスを見送り、顔を前に向けた。 目の前には俺の勤め先の中学校がある。 俺は教師だ。 今年で10年になる。去年の2学期からこのU中学校に勤めるようになり、2年生の担任をしている。担当は社会科だ。 一応、10年教師をしているので、新しい職場でも戸惑うことなく割と早めに慣れた。 冬休みもとうに終わり1月末。まだまだ寒いが、終業式まであと2ヶ月ほど。 授業も追い込みに入り結構忙しい。 「この寒さはやっぱり堪えるな」 寒さに耐えるため歯を食いしばって歩いていると 「おはようっ 古谷先生」 元気な女の子の声が聞こえてきた。 俺は振り返りながら声をかけた。 「ああ、おはよう冬木」 「先生どうしたの?なんか元気ないよ?小遣い減らされた?」 「そんなことはないぞ。小遣いも減らされていない」 「そう…後ろ姿がリストラされたサラリーマンみたいだったから…」 「うるさい…」 丸めていた背中を少し正した。 「俺の心配より自分の心配をしろよ」 「……?」 面白い顔だ。 「学年末のテストだよ。勉強しているのか?」 「あぁ…」 「大丈夫、大丈夫」 あまり大丈夫ではない顔だ。 「大丈夫ならいいがね」 ムッとしたらしい。 面白いヤツだ。 「さぁ、予鈴がなるぞ。サッサと教室入れ。」 「はーい。」 そう言って校舎の方へ走っていった。 「さてと…」 俺も朝礼と1時限目の準備があるので小走りで校舎に入った。 「はぁー、疲れた」 つい口に出してしまってハッとした。 「俺もおじさんかな…」 今日の受け持ちの授業はもうなく一時間ぐらい時間が空いてしまった。 「………」 少し考えて明日の授業の準備をすることにした。 資料を取りに行くため立ち上がった。 コンコン ドアがなった。 「どうぞ」 「失礼しまーす」
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