5/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「ただいま」 仕事が終わり、やっと家に帰って来た。 準備に思っていたより時間がかかってしまった。 「お帰りなさい。ご飯できてるわよ」 「ああ。分かった」 幸子が出迎えてくれた。 ダイニングに向かい食事を摂ろうと席についた。 「いただきます」 幸子がキッチンからでてきてビールを持ってきてくれた。 「どうぞ」 幸子も席につく。 「あなた、後で、お隣の伊東さんに回覧まわしてきてよ」 「ああ、分かった」 いつものやり取りだ。 仕事で疲れていても伊東理沙と話したいがために文句も言わずに引き受けた。 幸子も気づいているんだろうが、気づかない不離をしている。 「これうまいな」 俺って分かりやすいなぁと思いつつ食事をした。 「じゃあ、行ってくる」 伊東理沙の家に回覧を届けに家を出た。 玄関のドアの横にあるベルを押す。 ピンポーン 「………」 もう一度押す。 「………」 「留守か?」 部屋の明かりはついている。 「聞こえてないのか?」 ドアノブを引っ張ってみた。 開いた。 「すいませーん。古谷ですけど、いと……」 ビチャ 靴の下で水音がした。 下を見ると、 「紅い……、血かっ」 家にかけ上がった。 リビングに入った瞬間、凍りついた。 部屋中に血が飛び散り視界が真っ赤になった。 その真っ赤の中心に、 横たわり、腹が裂かれ、真っ赤な血の海に沈み死んでいる伊東理沙がそこにいた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!