~day1~

2/30
2656人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
九歳の少年にとって十八歳の青年の殴打は果てしなく強烈だった。   頬を打ち据えられた少年の意識は朦朧とし、起き上がろうという考えはあるが身体が言うことをきかず、ただ殴られたままの状態で横たわるしかない。   「糞ガキがッ!! 今度勝手な真似したらどつき殺すからな!! わかったか!?」   少年は何も言えなかった。何故自分が悪いのか。何が悪かったのか。とにかくこの人は怒りに満ちている。怒っている事だけはハッキリとわかる。興奮のせいで殴られた頬の痛みも感じず、恐怖だけが心を蝕んでいく。   「ちょっ!! 子供相手にやりすぎだよ! 修二」   修二と呼ばれた黒髪で長身の青年は、二人の少女に後ろから抱きつかれ身動きがとれなくなっていた。三人ともここ、梅尾市にある公立高校の制服を着こんでいる。   「俺の、これのどこがやりすぎだってんだよ。えぇ!? 俺たちゃこのガキのせいで今死にそうになったんだぞ!! マジでムカつくぜ! 好奇心とかで片付く問題じゃねえんだよ!」   「でも……」   「でもじゃねぇよ和沙! この!! 糞アホが!!」   修二が、横たわる少年の背中を無慈悲にも本気で蹴りつけた。血とともに口から息がぬける。   「ッ……修二!!」   和沙が悲痛に叫び、少年の元に駆け寄り体を起こしてやる。     泣きじゃくる少年は和沙のサラサラとした茶色の髪に顔をうずめた。   「ごめんなさいごえん……ごめんなざいごめんなざいごむ……ご……めぇんなざい……」    
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!