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(ハリアドネだって。変な名前だな)
ユリミナが“目会話”でカティリアとシルファーナに話しかけた。
(こらっ!人の名前を変とか言っちゃ駄目でしょ!)
(今は名前のことなんてどうでもいいの!母の従兄弟って…信じられないわ)
(でも、母さんの名前を知ってたよ?)
(そんなの調べれば分かるわ…それに、母は従兄弟が居るなんて一言も言ってなかった!)
もし一言でも言っていれば、こんな暮らしはしていなかったはずだ。
父が亡くなってから、カティリアたち姉妹は形見の狭い思いをして生きてきた。
住む家は父が残してくれた小さな家があったから良かったものの、暮らしていくためには働かなければならなかった。
稼ぎが少ない時は近所の人に頭を下げて食べ物を分けてもらったこともある。
そんな生活をしてきたのだ。
いきなり大層な身なりをした人がやって来て、母親の従兄弟です。と言われても、信じられない。
「失礼ですが、私たちの母に従兄弟がいるなんて、聞いたことないわ」
何か企んでいるのではないか?
そういう表情をして、カティリアは言った。
ハリアドネの瞳が細まる。
「聞いたこともないのは当たり前だ。お前たちの母親は、一族から逃げ出したからな」
「一族って…?」
「そんなことはどうでもいい。ここに来たのは、お前たちを引き取りに来たからだ」
シルファーナの質問を無視して、ハリアドネはそう言った。
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