恐ろしい男性

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  カティリアは今にも壊れそうな椅子に座ると、ギシギシと軋むテーブルに顔を伏せた。 眠そうに欠伸をする。 昨日は、仕事が夜遅くまで長引いてしまって、よく眠れなかったのだ。 カティリアたちの両親はいない。 五つの時に母は家を出ていき、十二の時に父が他界した。 それからずっと、カティリアとシルファーナは二人で家族を養うために働いてきたのだ。 「今日は、ファーナネエ様と一緒に歌を唄うお仕事なんですよね?」 テーブルに顔を伏せているカティリアに、ミシュアが洗い物をしながら、ニコニコ顔で聞いてきた。 「えぇ、そうよ。そんなに喜んでどうしたの?」 父と母がいなくなってから、カティリアは家族を養う為にいろんな仕事をやってきた。 三ヶ月前から、シルファーナも一緒に働いてくれていて、助かっている。 今日は、シルファーナと二人でとある居酒屋で歌を唄う仕事をすることになっていた。 あまり歌は上手ではないカティリアにとって、苦手な仕事だが、文句は言ってられない。 「ネエ様とファーナネエ様の歌は大好きですから、後でユリネエ様と一緒に見に行くのです」 カティリアの歌を上手だといつも言ってくれるミシュアを見て、カティリアは微笑んだ。  
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