その傷はどんな罪よりもの証。

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  棗の右手首には、 刃物で傷つけたような、傷。 「あっ、あっ、あぁああっ」 四年前。 俺と棗で、留守番をしていた時。 料理ができた棗は、 その日も晩御飯の支度。 綺麗に手慣れたように 野菜の皮をむく棗を、 俺はじっ、と見つめていた。 そして気がつけば、 多分、無意識。 だけど、それは。 棗の手から包丁を奪って、 棗の右手首を 包丁の先で切り付けていた。 傷口からドクドク、と 流れる真っ赤な血。 棗は痛みにか、顔を歪めて。 棗の全てに、興奮と歓喜。 可愛い、美しい、愛しい、 お兄ちゃん―――。 .
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