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【第一部】黒澤琢磨
2009年4月11日
透き通る、真夜中の空。その爽やかな風景には似合わないパトカーの音が鳴り響いている。
一人の男が漆黒の町の通路を駆け抜ける。
「はぁ…はぁ…」
男の手には、血が着いたナイフが一本だけあった。
「くそ…捕まってたまるか…」
どうやら、警察に追われているみたいだ。血塗られたナイフが男の立場を示している。
息が切れそうだ。途中途中、男の口から胃液が垂れて来る。
その時、偶然細いこの駆け抜けている通路よりも細い通路が目に映った。
「ここなら…大丈夫だな」
がに股になりながら、男は通路に入っていく。
しかし、それは捕まるよりも恐ろしい地獄が待っていた。
「兄ちゃん、何やってんの?」
通路を抜けた先は普通の小さな広場だった。聞こえるのは、遠くにいるパトカーのサイレン、そして一人の高校生っぽい男の声だけ。
髪の毛は漆黒を飾る肩までのセミロングヘアー。目付きは野獣そのものである。背中になにかがあるが、暗さで見えなかった。
「あ?う…うるせぇ!殺されたいのか!?」
男は自分より年下の男に血の付いたナイフを突き付けた。
「…血が付いてるな」
冷たい瞳で、男を見つめる青年。その瞳に恐怖を感じたのか
「あぁ…そ、そうだよ!それがどうした!?人殺しだよ!」
「ふぅん…」
そう一言、言った直後──
「俺も人殺しなんだ」
「は?」
スパッ
理解する時間は無かった。何故なら、既に男性の身体は2つに斬られていた。
「良かったな。牢屋は冷たいから、今死ねば味わわずに済んだ。光栄に思え」
2つに斬られた肉体は、鮮血を吹き出し、そのまま倒れた。
返り血を浴び、悪魔のような笑顔の青年。青年の手には、黒く鉛のような2m程の剣が握られていた。片手で、その禍々しい剣を手に持ち、地面に刺す。
「ご馳走は早くしなければ、ゴミ扱いになるからな…特に」
青年は真っ二つにされた部分に口を付け…
「──血や人肉はな」
ライオンのように、人間の生肉をムシャムシャと食べ始めた。内蔵を歯で噛み砕く度、血が吹き出すがその度、吹き出す所から出る血を吸い出す。
そして30秒後──
「…なかなか美味かった。余程の恐怖を感じながら生きていたんだろうな」
パトカーの音が段々と近づいてくる。
「ヤバいな」
青年は、猫のような動きで建物の屋根へと登っていった。
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