26828人が本棚に入れています
本棚に追加
別に千尋に対してやましいことがあるわけではない。
ないのだが、ほら、俺も一高校生だからね?
あまり口に出したくないようなやんちゃや馬鹿をしたこともなくはないのです。
千尋にそれをばらされるのは、できることなら勘弁願いたい。
「そ。そこまで言うなら黙っててあげるのも吝かじゃないね。あたしとあんただけの秘密ってことにしてやるわ」
「そんな二人だけの秘密、欲しくなんてないですけどね……」
「あはは!まああたしの気が変わらないよう祈ってることね。ほら、さっさと行くわよ。みんな待ってるんだから」
一度悪戯っぽく微笑んで、伊佐は颯爽と出口へ向かって駆け出した。
懐中電灯で廊下を照らしながら、足元の瓦礫を蹴散らして。
「ちょっ、伊佐!走ると危ないって!」
「いいからあんたも早く来なさいよ!二人で帰らないとクリアにはならないんだから!」
俺の制止も聞かず、伊佐はどんどん先へ駆けていく。
その足取りは軽やかで。
まるで羽でも生えているかのように。
「たく、急に元気になって……つくづくよくわからないやつだよなぁ」
ため息とともに愚痴をこぼしつつ、俺は離れていく伊佐の背を追いかけたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!