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突然、機内に爆発音が轟いた。
洋介はその尋常ではない音と衝撃に飛び起きた。
いつの間にか眠っていたらしい。洋介は膝に掛けられていた橙色の毛布を蹴飛ばしていた。
「なんだ!?」
叫びにも似た父の声が聞こえた。
「父さん!」
「洋介っ! 大丈夫か!?」
背凭れから身を乗り出し焦る父親を視界に捉えた洋介は、続けて英二と響子に視線を投げた。案の定英二は目を丸くしているし、響子は震えながら洋介の腕にしがみついていた。
「何があった!?」
勇作がコックピットに向けて叫んだ。
「詳しい事はわかりません!」
機長からは悲鳴が返ってきた。
「皆さん、決してシートベルトを外さないでください!」
機長の声は明らかに動揺している。それも当然だった。まだ揺れが続いていて、機内の人間も一人残らず目を覚ましうろたえるばかりだ。
またがくんと機体が大きく揺れ座席の上から酸素マスクがぶら下がった。照明も異様なほど不安定で、事態を掴めず困惑する全員の不安を余計に煽り続ける。
振り返ると窓の外を見て愕然としている勇作と晴美がいた。その後ろの藤原は頭を抱え込んでいるのかあまり姿が見えない。隣のケビンは窓の外を見ているようだ。洋介の目には、彼がやけに落ち着いているように見えた。
それも束の間、コックピットから桜庭の叫び声が聞こえてきた。
「もうダメです!」
ダメという言葉が洋介の脳に響く。桜庭は続けて「機長!」とすがるように放った。
混乱し驚愕する十人を乗せた飛行機は、深い混沌の闇へと堕ちていく───……
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