白紙の本

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「あっっついなぁ……。」 6月の梅雨。 蒸し暑いこの時期は嫌いな人も多いハズ。 「身体からカビでも生えそう…。」 ぶつぶつ呟きながら午後の授業を受ける高校生達。 ネクタイなんか勿論してらんない。ワイシャツは第二ボタンまではだけ、ズボンから出し、左手には冷房の広告付きの団扇。机には右腕の跡が汗としてジトッと形取る。 僕もその例外に漏れず、蒸し暑さにより団扇を扇ぎながらじっと堪える。 外は雨。朝顔が教室の窓からよく見える。 気の利いた冷房設備とは無縁な三階建ての、所々に亀裂がある鉄筋コンクリートの我が学舎(まなびや)。 四ッ谷に構える創業120年を迎える、よく言えば伝統校。 …悪く言えば古い高校。 皮肉な団扇で扇いでると、ようやく今日のサウナ終了チャイムが鳴る。 …キーンコーンカーンコーン…
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