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『はっ!』
目が覚めれば、見慣れた天井がある
あぁ………夢、か
額には冷や汗がでて、首筋等に長い髪が張り付く
荒い呼吸をなんとか整え、周りを見渡す
よかった、私の部屋だ…
夢でのような真っ暗な暗闇は私を孤独にする
「水無月様………水無月様」
ふと視線を横にずらせば、太裳が私の顔を覗いている
『太……裳…………』
太裳を目にした瞬間、どっと疲れていた身体が安心していく
「悪い夢でも見ましたか?」
心配しながら気遣う太裳に私は大丈夫と返し、褥からでる
カタ…
ゆっくりと廊下にでれば冷たい風が吹く
『雪…………』
「水無月様?」
『雪が見たいわ……………』
病弱な私は外に出たこともなく、ましてや満足に動くこともできない
唯一楽しみなのは、四季相応の風景
春には暖かい風が吹き、桜が散る
夏はポカポカした陽射しが差し込み、池を照らす
秋は紅葉や銀杏が靡き、綺麗な彩色になる
冬は雪、寒いがひらひらと舞い散る雪は幻想的な風景
『いつになったら雪が降るかしら……』
あの真っ白な粉雪をもう一度みたい
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