第1話『オレが噂の何でも屋』

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  2010年   2月14日(日) PM2時     旧静岡県、現在の関東連合国のとある都市に、活気があふれる商店街があった。 この狂った時代でも、諸国が運営する発電所や水道、ガスにより、民衆は戦前と近い水準の暮らしを送ることができた。     その商店街を歩く一人の青年。 黒い長めのトレンチコートに黒のニット帽、さらにサングラスをかけている怪しさMAXの青年だ。 しかも迷彩のカーゴパンツにコンバットブーツで下半身を固め、背中には自動小銃。それが怪しさに拍車をかけている。 ちなみに、護身用に銃器を持ち歩くのはもはや当たり前だ。     カフェ   その商店街の一角に、洒落たカフェがあった。中世ヨーロッパを思わせる赤いレンガのような外壁のカフェだ。   そのカフェの中、奥の方のテーブルに先ほどの怪しさMAXの青年が座っていた。 「ファントム鈴木か?」 青年は突然、真っ黒なスーツに身を包んだ男にそう声をかけられた。 ちなみに男もかなり怪しい。 「ああ。ファントム鈴木、何でも屋だ」 青年は目線だけを男に向け、そう答える。 青年の名は“ファントム鈴木”。彼は今話題の“何でも屋”だった。     男は鈴木の向かいに腰を下ろし、「コーヒー一つ」と注目をすると、木目が美しいテーブルにファイルを置いた。 「依頼だ」 男はそれだけ言い、ファイルを鈴木へ差し出す。 「…。あんた、関東軍だな」 鈴木はファイルを受け取りながら、男に尋ねた。 ちなみに関東軍とは関東連合国軍の事だ。決して旧日本軍の部隊ではない。 「ああ」 男はそれだけ答え、黙り込んだ。 仕方なく鈴木はファイルに目を通し始めた。     鈴木はファイルの中の書類を読み終え、ファイルをテーブルに置いた。 「コイツを暗殺すりゃいいんだな」 鈴木はファイルのあるページを開き、そこに映る男を指差す。 「ああ」 男は口数は少なくそう答えた。 「…。この仕事、受けるぜ」 一瞬考えた後に、鈴木は依頼を受けることを決意する。 「そうか、前金だ」 男は札束が入った封筒を取り出し、鈴木へ渡した。    
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