第1話『オレが噂の何でも屋』

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    2月19日(金)     名古屋国   この日、鈴木は名古屋国(旧愛知県)に来ていた。 彼は歩いてとある公園の近くにあるビジネスホテルに入ると、予約していた部屋へチェックする。   彼が予約した部屋はホテルの最上階であり、かなり見晴らしが良かった。 日差しが差し込み、電気をつけなくても明るいベッドルームに入ると、鈴木は背負っていた長さ1mほどのハードケースをベッドへ置く。 「はぁー、重いなこのケース…」 鈴木は溜め息をつきながらケースの横に腰掛けた。 「まだ、時間あるよな…」 鈴木の腕のG-SHOCKはまだ約束の時間ではない事を示している。 「釣りでも行くか」 彼はハードケースから釣り竿を取り出し、小物が入ったバッグを持って部屋から飛び出した。     港   鈴木はホテルの近くの港に来て、釣り糸を垂らしていた。 彼はぼーっと青空を眺めながら、アタリを待つ。   「ん?」 日が沈み始めた頃、鈴木は背後からの音に気がついた。 チラリと後ろをうかがった鈴木が見たのは2台の真っ黒なSUVと、それに挟まれて走る真っ黒なベンツ。それらが何故か港を駆け抜けている。   謎の車列を目撃した数秒後、ついに念願のアタリがあった。 「しゃっ、ヒット!」 彼は岸壁に座りながら、大きな投げ釣り用の竿を持ち上げて同じく大きなリールを巻く。 「…」 だが、鈴木は釣り上げたものを見て言葉を失った。クサフグ。まさに大ハズレな魚である。 「これだけ待ってフグ一匹かよ…」 肩を落とし、片付けを開始する鈴木。ちなみにフグには海へお帰りいただく。 「やってらんねー…」 彼は夕日を浴びながら、トボトボとホテルへ戻った。     ホテル・ベッドルーム   辺りがすっかり暗くなった頃、鈴木は部屋へ帰って来た。 疲れたのか、彼はベッドへ倒れ込む。   帰って来てからしばらくすると、ホテルの近くの公園が騒がしくなってきた。 暴走族の集会らしい。 鈴木は双眼鏡で公園にある広場の噴水の周りをグルグルと回る暴走族グループを確認した。 「さて、仕事だな」 そう言って彼はハードケースを開け放ち、何かを取り出して組み立て始める。   鈴木は組み立て終え、“何か”を窓際に置く。 そこに置かれた、月明かりで輝く物はドイツ製簡易狙撃銃『G3 SG/1』だった。  
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