『第一章』 出逢い

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 施設を出たキャスは、両親との思い出の家に戻り、学校へ通いながら、数々の作品を作り上げた。  作品を作るのには、多大な時間が費やされた。  そうした忙しさで気持ちを紛らわせなければ、自分が自分でいられない。  キャスは、自分の心とずっと闘ってきたのだった。  生活費の全ては、院長が預かっていたキャスの両親の遺産で賄われていた。  キャスの両親は、キャスの為に莫大な遺産を残していた。  しかし、キャスは、いつも思った。  遺産なんていらないから、両親に生きていてほしかった。  もう一度、時間が戻るならば、もう二度とあの言葉は言わない。  そう、時間が戻るなら。  時間が。  …。  時間?  時計の針は八時五十五分を回ろうとしていた。  やばい。遅刻だ!  キャスは、慌てて立ち上がると、急いで服を着替えた。  そして、リルが用意しておいてくれた朝食のパンに、ブルーベリージャムを塗り、口に頬張った。  これが、大体、毎朝の日課だ。  「リル、行ってくるよ」  「イッテラッシャイマセ」  
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