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施設を出たキャスは、両親との思い出の家に戻り、学校へ通いながら、数々の作品を作り上げた。
作品を作るのには、多大な時間が費やされた。
そうした忙しさで気持ちを紛らわせなければ、自分が自分でいられない。
キャスは、自分の心とずっと闘ってきたのだった。
生活費の全ては、院長が預かっていたキャスの両親の遺産で賄われていた。
キャスの両親は、キャスの為に莫大な遺産を残していた。
しかし、キャスは、いつも思った。
遺産なんていらないから、両親に生きていてほしかった。
もう一度、時間が戻るならば、もう二度とあの言葉は言わない。
そう、時間が戻るなら。
時間が。
…。
時間?
時計の針は八時五十五分を回ろうとしていた。
やばい。遅刻だ!
キャスは、慌てて立ち上がると、急いで服を着替えた。
そして、リルが用意しておいてくれた朝食のパンに、ブルーベリージャムを塗り、口に頬張った。
これが、大体、毎朝の日課だ。
「リル、行ってくるよ」
「イッテラッシャイマセ」
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