『第一章』 出逢い

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 博士であると同時に、キャスには不思議な能力があった。  ある呪文を唱えることで、植物や動物、人間さえもを死に至らしめることができるのだ。  その能力が初めて、そしてたった一度だけ発揮されたのは、今からちょうど十三年前の、キャスが五歳の誕生日を迎えた時のことだった。  色とりどりの花で美しく飾られた部屋。  たくさんの料理が並べられたテーブル。  全てのものを輝かせるシャンデリア。  誕生日を祝うためのプレゼント。  まるで物語から抜けだしたかのような、素晴らしいパーティー。  そんな中、それは突然起こった。  何気なく呟いたキャスの一言で、その場にいた全ての人が息絶えたのだ。  友達も。  叔父も。  伯母も。  その子供達も。  そして。  キャスの父親、母親さえも。  幼かったキャスには、その時、何が起こったのかさえ分からなかった。  ほんの一瞬の間に起こった出来事で、キャスの人生もそこにいた多くの親しい仲間たち、そして、その人々に関わる全ての人々の人生が変わってしまった。  
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