45人が本棚に入れています
本棚に追加
来客者に発見された時には、キャスは、まるで魂が抜けたかのように呆然としていたらしい。
もっとも、それは、その事件が起こって何年も経った後に聞かされた話だが。
しかし、それもそのはずだ。
いくら幼く何が起こったか分からないとはいっても、目の前で自分の両親が死んだのだ。
気をしっかりと保てるはずがない。
でも。
きっと幼心に分かっていたのだ。
自分が殺した。
気が付いた時には、キャスは病院のベッドの上にいて、その時の記憶はなくなっていた。
幼いキャスには、その過酷な現実を受け止められる心が、まだ、なかった。
「…お父さんは?お母さんは?」
目覚めたキャスが、最初に口にした言葉だった。
そこの医師は、とっさに嘘をついた。
「きみのお父さんとお母さんは、急な用事ができて、しばらくの間、帰ってこれなくなったんだ。でも、きみはいい子だから、一人で待っていられるね」
「うん。僕、ずっといい子で待ってるよ」
記憶をなくしていたキャスは、その医師の言葉を素直に聞き、そう答えた。
最初のコメントを投稿しよう!