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それは、心の奥底にずっと眠らせていた忌まわしい記憶。
「お呼びですか、院長先生」
「ええ、キャス。ここに座りなさい」
「はい…?」
「いいですか。落ち着いて聞きなさい」
院長は静かに語りだし、キャスは厳しい現実を知った。
院長の話を聞き終わったキャスの心は、言い様のない想いと絶望感でいっぱいだった。
どうして。
なぜ。
嘘だ。
そんな問い掛けと否定が頭の中を行き来しては消えてゆく。
しかし、それは確かな真実。
キャスには、もう、それだけの真実を受け止められる精神が備わっていた。
キャスは、全てを思い出した。
あの忌まわしい言葉も、全てを。
「…じゃ…あ、僕が…俺が、両親を殺したんですね」
力なくうな垂れたまま、キャスは消え入るような声で、確認するように、院長に言った。
「そうじゃありません。あれは事故だったのです。キャスは何も悪くありません」
院長は優しく、それでい哀しい眼差しで、キャスを見つめた。
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