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2,3分歩いていると浩太郎も見覚えのある建物に着いた。
自分の記憶が正しければここは昨日自分が引っ越してきたマンションだ。
「まさか、修哉ん家ってここ?」
「そのまさかだ。とにかく部屋に行くぞ?お隣の河村さん。」
「は…?」
浩太郎は意味がわからずその場で固まってしまった。
お隣の河村さんとは一体どういう意味なんだろうか。
昨日確認したお隣はたしかに湯本の表札だった。
しかし、それにしたって話が上手すぎる。
修哉のクラスになったのは偶然にしろ、家まで隣になるなんてどう考えてもおかしい。
そんなことを考えていたら
「何やってんだ?おいてくぞ?」
という修哉の声が聞こえた。その声で我に帰った浩太郎は
「ちょ、ちょっと待てよー!」
と急いでエレベータに駆け込んだ。
修哉の部屋は浩太郎が考えたとおり自分の部屋の隣だった。
「家まで隣なんてどういうことだよ。」
修哉の部屋に案内され浩太郎は部屋の中央に自分に背を向けている二人掛けのソファーに座った。
「さあな?部屋取るときに確認しなかったのか?」
「知らないよ。この部屋用意したのお母さんだし。」
「じゃあ、お母さんが気を利かせたんじゃないか?浩太郎は俺のこと気に入ってたし。」
「何でうちのお母さんが修哉の住所知ってんだよ。」
「浩太郎知らなかったのか?毎年お前ん家から年賀状が来てたんだぜ?」
そう言って修哉は二人分のマグカップを持って台所から出てきた。
「は?俺そんな話聞いてない。だいたい、なんでお母さんが修哉に年賀状なんか書いてんだよ?」
「まあ年賀状ってもほとんどお前のことだったけどな。テストで学年1位をとった話とか、パンフレットの教師欄に俺の名前を見つけたからうちの高校を受けるって決めた話とか。とにかく1年間の浩太郎を簡単に書いたやつだったよ。そこの引き出しに入ってるから見たらどうだ?」
そう言って修哉は引き出しのほうを指差した。
言われるがままに浩太郎は受け取ったマグカップを置き、中を見てみた。
そこには確かにお母さんの字で、浩太郎のことが書かれたはがきが3枚入っていた。
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