彼女の叫び

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「なるほどね」  少し理解し難い部分も存在するが美紀がちゃんと理解する必要はない。解決するのは月村だ。  月村は書き終えて夏奈を見て言った。 「夏奈一人でも解決出来るだろ。何故俺に協力要請を?」  協力要請。相談を表現したその四文字は不思議なものを感じさせる。協力とは共に何かすることだから。  それを少しきつく言った。  夏奈は『彼の声』の話を始めた辺りから不思議と明るい感じが消えていた。 「……特に理由はないです。私が困っていたときに月村先輩を知ったんです」 「そうか……わるい。随分と探偵(難虫)としての素質あるからさ」  棘のある言い方をしたことを月村は詫びた。そして素質ありということは月村最大の誉め言葉に感じた。  今は出ていないが月村にとって夏奈は苦手なタイプであることは確かな様子だ。話している月村を見て単純に感じたことだ。  とりあえず、と月村は席を立つ。 「どうすんの?」 「放送室に行こう」 「私一応見たんですけど特に何もありませんでしたよ」  夏奈が親切心で言うが月村の言ったことが揺らぐことはない。 「俺が行くっつったら行くんだよ」  ははは、と笑い図書室の扉を開けた。美紀はその後ろに付き夏奈は更に後ろに付いた。  こんなことでも動くのかぁ。 夏奈は関心しつつ月村を追った。          *  夏奈が自分の中にある素質に気付いたのは数年前の中学時代だ。  周りが自分に劣り論議だけでなく日常会話でも理解し合えない関係ができてきた。  聾唖学校ってこの辺に在ったっけ?  誰も理解してくれなかった。  ろうあがっこうってなに?  そこ説明しなきゃ駄目ですか? 夏奈は何度も頭の中で相手を蹴落とした。貴方は私に適切な人ではない。分かり合うなんて不可能だ。表には出さないが何度も思った。
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