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そんな風に人を分類していたとき、いつの間にか夏奈の周りには人が居なくなった。
あの子と話すの疲れるのよねぇ。
これは耳にしたことだ。直接言われたことはない。
黙れ下等生物が。何だその上からの目線は。馬鹿どもが私を下に見るな。 挫けた事はなかった。私に適切な人はこの学校にいない。そう思い込んだ。
この頃、人と話すことを避けていた。
だが、転機は訪れた。二年生に上がったとき行われた実力テスト。夏奈は生まれて初めて学年一位の座を逃した。その人の名はハッキリと覚えている。「蛯名」。
順位表を見た時、当然のように一番上にあった名前が変わったときの衝撃は大きかった。
直ぐに「蛯名」の元へ向かった。話がしたかった。一位の座を逃した事を悔やむ気持ちを話をしたい気持ちが勝った。
そして「蛯名」に会うことができ、話をした。不覚にも驚いてしまった。周りとの違いの無さに。でも彼、「蛯名」の話すことはとても論理的で夏奈の好奇心を沸き立てた。
その時、夏奈には友達と呼べる仲にあるのは「蛯名」だけだった。だからこそ訊いてみた。
聾唖学校ってこの辺に在ったっけ?
川挟んであったよ。この前見たから。
通じた時の嬉しさもこの上ないものだった。質問なんてどうでもいい。通じる事が大切だったから。
これが夏奈の人生を変えた瞬間だった。
夏奈は考えた。「蛯名」はなぜ周りと変わらずに笑い合えるのか。そして気付いた。わざとなんだと。
「蛯名」は私に近い存在だ。だからこそ感じる事も同じはずだ。でも生活だけは違う。「蛯名」は楽しめている。夏奈は楽しめていない。何故そうなるか、簡単だった。適応能力だったから。「蛯名」は周りとの違いに気付き見下していたであろう。それは夏奈と変わらないが、「蛯名」は全てを認めて周りを変えるのではなく自分を変える努力をした。周りはそれを知らないのだから共に笑いあえる。
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