プロローグ

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         *  誰が呟いたのだろう。分からない。分からないって何だろう。  まぁ構わない。ポジティブだ。  誰かは歩き出す。この道中は慣れている。迷う道じゃない。普通の通学路だ。でも場所に着きたくない。その思いが交錯する。っつか。 「サイテー!」  山内美紀(やまうちみき)が図書室で読書する月村未城(つきむらみき)に言い放った。 「あんだよ」  月村は相変わらず夏休み中も何故か読書をし続けている。なぜ夏休み中も?  美紀はと言うと、補講に参加中だ。今はその為に登校してきたたのだ。月村に舞い込む相談事に付き合っていたらいつの間にか成績が下落。補講に引っかかった。  あぁ~分からないって何だろう。迷うって何だろう。  これが補講に引っかかった美紀の第一声だ。  泣く泣く美紀は補講に参加している。  月村、難虫はというといつも通りのようで、特に変化したと言えば、偏屈長髪茶髪男子が偏屈茶髪男子に変わったことぐらいだ。火野千奈(ひのちな)に切られてから一ヶ月位なので大して伸びてない。  ちなみに図書室探偵(トショタン)になると呟いたのだが、結局定着せず、今に至る。 「ホントサイテー」「別に俺の所為じゃないし」  補講はあんたに付き合わされた所為だと言い張る美紀に月村が言った。 「もぅやだぁ……」 「ほら、早く行け」 「まだ時間あるし」  現在の時刻は午前八時十五分。補講一時間目開始まであと十五分はある。  月村の前に座り、月村を見る。相変わらず綺麗な顔してるもんだ。火野千奈に殴られた&切られたのに。  早く夏休み終わって欲しいと願っている。補講は美紀にとっては少し屈辱だ。九州の進学校に通っていた者として。  美紀は少しため息をつく。補講の被害者というものは意外と少数だ。年間成績が一になる者が主だが、なりそうな人も受講しなくてはいけない。引っかかったら仕方ないのだが、美紀は一じゃないのだ。なのになぜ。その思いが頭をめぐる。
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