プロローグ

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         *  補講も終わり、時刻は午後一時。昼までなら十二時前に終われよ……。  美紀の受ける補講の内容は英語。そしてその内容は、基本なのだが、美紀にしてみれば常識。前置詞の後は動名詞だとかなんだとか。そう思う美紀が引っかかった理由としては問題文の読み違いが主だった。だが、赤点になるほど読み違いがあったかというとそういう訳じゃない。そこまで読み違えては、他が上位なのが変だ。美紀は大して答案を見ていないので、赤点になった理由は本人も理解は出来ていない。  美紀は教室を出て、図書室に寄る。 「来たよ」  扉を開くと、図書室で黙々と読書する月村の姿があった。 「おぅ」  少しふて腐れてる? 多少の疑問があるものの、気になるのは昼食の事。 「昼食べた?」 「あぁ」  月村は鞄からビニール袋をちらつかせる。 食べたのか……。  美紀は月村の前に座り、鞄から弁当を取り出す。一ヶ月前は弁当は買っていたが、今では自分で作れるまでに至った。 「……なんで弁当あんだよ」 「いいでしょ。別に」  美紀は仏頂面をかます。落第野郎。その言葉が頭に残り、腹がたつ。 「なんだ?元々難虫に付き合う気だったか?」  読まれたか……。 「まぁそうだね」 「相談くるとは限らんがな。夏休み中はあんま来ねぇよ」  美紀は食べながら月村に訊く。 「じゃなんでここにいるのさ。相談来ないなら学校に来る必要なくない?」  月村はページを巡る。 「あんまっつったろ? 一応来るんだよ。それに俺は本を読みに来てる。この量は持ち帰れない」  月村は後ろに指を指す。本棚があり、普通に本棚が埋まるどころか、横になったり、本の上に本を置いたりしてある。背表紙に表記されているジャンルを見るとバラバラだ。つまり月村が読むために運んできたのだ。
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