彼女の叫び

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         *  美紀は図書室で相談を受けるスタイルになる。月村が相談者の前に座り、美紀が月村の横に座る。  彼女は、急に図書室に飛び込んできたわけで性格はまぁ……。 「井上夏奈(いのうえかな)です!」 「あ……はい」  月村は彼女の気迫に圧されなんと言うか微妙な顔をしている。いつもの、月村が淡々と質問するスタイルが消えていた。その理由は分かっている。井上と名乗る彼女の性格の問題もあると思うが、一番はおそらく月村の第一声であろう。相談いいですか? と訊かれ、いいよ。 と答えた。つまり相談を受けるということになる。月村は質問をしてから受けるか決めていた筈だ。  月村は一度一息ついて、彼女を落ち着かさせた。 「……まぁ一回いいかな」  一回ってなんだろう。 美紀は思う。妙な事は言わないし、言い間違いはしない。一回とはなんだろう。 「はい……?」  井上とりあえず止まる。 「あの、俺質問するんで、それだけに答えてください」  滅多に使わない敬語が出ている。 もしかして苦手なタイプ? 「あ、はぁい」  軽く手をあげる。美紀は少し吹いた。  なんて子供なんだろう。つか可愛いなコイツ。腹立つことに。 美紀は井上の顔を見て思った。女をカテゴリ分けした時、属すのは明らかに綺麗系ではなく可愛い系であろう。  この学校美人さん多いな。 「で、最初から。名前はなんですか?」 「え?井上夏奈です」 「……一年Hだよね?」  靴の色は一年生だ。敬語がここから消えた。最初から先輩と呼んでいたのだから一年だと判断できた筈だ。それに集中出来ないほどに井上の印象は強かった。  でもなぜHと? 「はい。Hです。先輩は頭良いのに何でFなんですか?」  また井上から質問が飛ぶ。 「ん?まぁ……何となくな」 「月村何でHって知ってんの?」  気になるので口を挟む。 「……四月に新入生の超オテンバ女子が満点とったって噂がたったの。名前は井上だって覚えてたってわけで、満点とりゃ有無言わせず特進だろ」  超オテンバ女子で井上。判断材料は十分か。
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