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「つか口出しすんな」
美紀はその言葉を聞いて軽くムッとする。
言い方があるだろ。
井上は相変わらず笑顔を顔につくったままだ。目が合うと更に笑う。つい美紀もニコッとしてしまう。
「話を戻そう。まぁ井上さんの事は分かった」
「夏奈で良いですよ」
ニカッとする。なんて良い人なんだろうと思わせる。人に好かれやすいタイプだ。特に女子に好かれそうな。
月村は少し悩みながらも話を続けた。
「……夏奈は何を相談しに?」
「えと……まず『彼の声』って知ってますか?」
……?
美紀は知らない。月村にも知っていない雰囲気が出ている。
「知らん……つかコイツいて良いのか?」
月村は美紀に指を指す。
「構いません……」
そんな事どうでもよさそうだ。何というか雰囲気が変わった。大分深刻なのだろうか。
「『彼の声』というのは、ここ最近学校で多発している奇妙な事件です」
事件。HBKを思い出す。あれは相談ではなかった。事件だった。余談だが月村はあの後、親未に大分怒られたらしい。風の噂で聞いた話だが。
「で?具体的に言うとどういう事件?」
「音です。音を使って人を気絶させます」
「どやって?」
つい美紀が声を上げた。月村が睨む。
すいません……。
「高音です。高周波みたいな感じの」
「え……出来んの?」
美紀の疑問に答えたのは月村だった。
「可能だな……高音は頭を痛くさせるし、頭が痛いと吐き気が来る。吐き気が来るといつか倒れる。頭痛は脳外科って言うぐらいだ」
なんの知識だそれ。本知識か? そんな疑問が一瞬過るが、それは気にすることじゃない。可能。それが一番気にすることだ。
「それが相談内容か?」
「そうです。何とか止めさせてください」
「……」
月村は眉間にシワを寄らせ、微妙な顔をする。何か悩んでいる。
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