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「……なしたの」
美紀が考えるというより悩む月村に訊いた。
「……相談。解決するよ」
月村は美紀の疑問に答えず、愛想笑いをみせ、相談解決を誓った。
「ホントですか!?ありがとうございます!」
夏奈は大喜び。 若いなぁ。一年生って。
ただ何より気になるのは月村の反応。何というかパッとしない。篠原伸(しのはらのぶ)の相談時の様に。夏奈に何かあるのだろうか。
「……一つ質問。止めさせてって何だ?」
夏奈のさっきの言葉だ。
今度はなに?
「はい?」
夏奈は固まる。喜びの顔が少し消えた。
「止めさせてって何か思い当たる人物がいるように感じるんだけど」
……確かに。 言われてみると、そう思える気がする。言葉の纏う雰囲気がそう告げている。
夏奈は表情一つ変えずに淡々と答えた。
「……そんな事言いましたっけ?言ったんなら間違いです」
「そう……なら良いんだ」
美紀にとって、今の質問は意外。月村はこういう事を本人には言わずに、疑い続ける人だと思っていたし実際そうだったと思う。何かが彼を変えたのだろうか。
「何かその他に詳しく知らない?」
「えと、あと知ってるのは……」
夏奈は『彼の声』について知っているものを説明した。
彼の声という名が付いたのはその音から来るらしい。第一被害者の芳賀によると、学祭のバンド練習をメンバーでしていた時、休憩中たまたま一人になった。一人になった芳賀は特に何もせずメンバーが帰ってくるのを待っていたのだが、その時、急に放送がかかり『HIS VOICE』と流れたと思うと、凄まじく高い音が流れた。当然メンバーが戻ってきた頃には芳賀は倒れていた。芳賀は特に思い当たる節はないと発言している。名前の由来は最初に流れる『HIS VOICE』だ。ほぼそのまま直訳で『彼の声』。
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