初めまして

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ビルに到着すると、ハンカチで肩や髪を拭きながら、エレベーターに乗り込んだ。 心臓の音が、徐々に早くなっていくのが分かった。 無理もない。 今日これから会うのは、来月から撮影スタートのドラマで、原作の作者も今日は来るのだ。 初めてその本を読んだ時、ドキリとした。 主人公があまりに自分に似ていて、まるで私生活を覗かれているような錯覚さえ覚えたからだ。 それからと云うもの、その作家の新作が出る度、速攻で読みふけった。 自分なら、こう表現出来る。 自分なら、こんな言い方でこの気持ちに彩を付ける。 これを演じたい。 演ってみたい。 淡い恋心にも似た、作家へのリスペクト。 それがこうして、叶おうとしている。 鼓動はもはやレッドゾーンギリギリだ。
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