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祖父の訃報を受けたのは、
やっと人の手を借りず、仕事が出来るようになった頃の、
それこそ仕事の忙しい盛りだった。
山積みの仕事を前に、いまいち実感が湧かない私は、無表情のまま、社長に休暇申請を出した。
そのままデスクを片付け、家に帰り荷造りし、新幹線に乗って車窓を眺めていくうちに、自然と熱いものが頬を伝った。
幼い頃、幼稚園からの帰り道、雪に覆われた田んぼで鶴を見たとはしゃいだこと(実際は鶴どころか、白鳥でもなく、白サギだったらしい)。
相撲を見るか子供番組を見るかで取り合った、テレビのリモコン。
散歩に出かけるが、日に日に道端で座り込むことが増えた祖父。
そんな祖父の為に、家中に付けられた手すり。
和式から洋式に変わったトイレ。
それまで祖父母で布団だったのが、いつの間にか祖父だけベッドになったこと。
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