4人が本棚に入れています
本棚に追加
*
行く宛もないのに
フラフラしている気分にも成れなかったので、
私は、そのまま家に戻った。
本当は家も厭だったけれど生憎、
金銭を持たずに
家を出た為に、ホテルに
行く金もなく…。
部屋のカーテンは
暗幕の如く
完全に光を遮断している。
去年、彼が突然買ってくれた燭台に蝋燭の炎が踊る。
「…っ…っっ。」
涙が
だらだらと流れ始めた。
嗚咽も止まらず、
何と醜きかな、自分。
胎児のように、
小さく丸まって世界を遮断した。
此のまま、
本当に胎児に戻れたら
どれ程良いか。
そして、やり直すの。
十数年後、
また今日を迎え、
貴方が去っていく瞬間
袖を掴んで心中でも
勧めようかしら。
最初のコメントを投稿しよう!