社会水族館

2/2

121人が本棚に入れています
本棚に追加
/235ページ
乾いた瞳を泳がすと 水族館にいるウツボのように 底辺を這う つややかな自分を思う てら、てら と 内緒話のようにひっそりとしたぬめりのなかで 色んな鱗を身に着けながら 明日の予定を考えるふりをすると 光もない無機質な通勤快速のなかの一部に成れる気がした   誰かの溜め息が 自分の酸素みたいなものになって てら、てらのぬめりは 人の足を踏まない魔法になる   朝を浴びても コンクリートは発光せずに 淡々とそこで 暖かくなるように体を揺する   その横を うまく風もきれずに 歩く私、 わたしは。   餌を待つ空しいウツボ ぬめりのない、 誰にも気付かれない 誰にも
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加