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冷たい風が頬を撫でる
吐き出す息は白く
空を見上げると日の光などまったくなくて
一面雲で覆われていた
じんじんと手が痛みを訴える
温めようと手を擦り合わせたりするが意味をなさなかった
小さく溜息を吐いて視線を空から隣を歩いている人物に移す
冷たい風に銀の髪を揺らされながら歩く彼は
顔色は決していいとは言えず
寧ろこの寒空の下では青白く見える
そんな彼を見ながら手袋でもしてくるんだったと呟くと赤い瞳がこちらを見た
「…寒いのか?」
「さすがにちょっと、ね」
そう言って苦笑いすると彼は少し考えるような仕草をして
私の目の前に来たかと思うと包み込むように両手を握った
驚いて目を白黒させていると寒くないか、と聞かれたので
小さく首を縦に動かした
なんだか自分だけが動揺していて悔しい
そう思いながら恥かしくなって俯いた
彼の体温は冷たい私の手には
燃えるように熱く感じられ
痛みさえ伴う
私は何故かそれをとても愛おしく感じたのだった
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