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俺は今、部室に来ていた。チャイムはもう鳴ったようだ。
(あ~ぁ、今頃花井は授業受けてんのかな…)
俺は花井が阿部と喋ってるのを想像してみる。阿部が羨ましい…そして…憎い…ムカツク…俺らしくない感情がどんどん沸き起こってくる。
(花井…)
(はない…)
(は、ない…)
頭に【花井】と言う言葉が出てくる。無意識に頭の中で花井を呼んでいた。
(来るわけないのに…振り向いてくれるわけないのに…【花井梓】と言う人間がこんなに愛しいなんて…)
坊主で野球部のキャプテンが俺を呼ぶ時の声が新鮮に蘇ってくる。
『田島』
『たじまぁ!』
『田島?』
『たぁーじぃーまぁー!!』
(あぁ…花井はなんで阿部が好きなんだよ…)
悲しくて泣きそうになる。日に日に花井への想いは強くなる一方だ。
田島が膝の間に顔を埋めた瞬間、部室のドアが叩かれる。
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