◆残されたのは、偽りの愛を語った唇と僅かな雫

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        真っ白な世界       スクランブル交差点で        わかれた時              また明日、と        (言ったキミの唇が)                                                        「……は…、っ!」   ひゅう、と喉が潰された後のような呼吸をした。 こんな寒い季節にも関わらず汗をかいているようだ。 服が身体に張り付いて気持ち悪い。 まだ外は闇に包まれている。 壁に掛かっているカレンダーに視線を走らせる。   …あぁ、そういえば   「今日は……、」   こんな時間に起きた理由を理解した。 顔にかかった、暫く切っていないため長くなってきた前髪をかきあげる。 まだ夜は明けていないが、こんな時間では寝るに寝れない。 仕方なくシャワーを浴びようと、寝間着のままタオルを持ち脱衣所へ向かう。   ザァ…っと顔面に降り注ぐ多量の雫。 一つ一つが、先程かいた汗を流す。   「  ……」   ポツリ。 肌を滑り流れる雫に愛しい名を乗せ、一緒に流そうとしたけど。 何故だろう。思い出せない。 彼女の名はなんだった? 思い出せるのは、ただ…   「嘘つきは…俺、でした…」   自嘲気味に吐き捨てる。 あの日、偽りの愛を語った唇で。      
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