死神とおじさん

出会い

何時から此処でこうしているのか？
会社の帰りに、同僚と飲みに行った所までは思いだせる。
しかし、その先は全く思いだせない。
相当に飲んだのだろう。
そして今は、知らない人と飲んでいる。歳は５０代半ばといった所だろうか、名前は、聞いたのかどうか覚えていないが、今は分からない。
何時からこの人と飲んでいるのか、どうやって出会ったのかは分からないが、この人の話しは面白い。
なにせ自分の事を、【死神】だと言うのだ。 それも、冗談で言っているという感じではなく、真剣に言っているのだ。
そして、私もその話しが面白くて、真剣に聞いていた。
『私も昔は、普通の人間だったんだ。しかし、ある日を境に変わってしまったんだよ、【死神】に…。何時からなのか、はっきりとした事は解らないが、私は気付くのが遅かった。それに、【死神】になった人に出会うのにも時間が掛かってしまった。君は運がいいよ、今、こうして私に出会えたのだから…』
と言って、その人は立ち上がった。
そして、
『君も【死神】にならない様に気を付けなさい。』
そう言うと、その人は店を出て行った。
私は、１人で飲んでいても、仕方ないので、家に帰って寝る事にした。