最終章。『謎は謎のままに』

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倉内が間宮に話をしている背後で草岡は自分の夫に身振り手振りで今までの経緯を話している。子供達2人の姿はもうない。聞かせたくない話なので自分の部屋に行くよう命じられたのであろう。 「やはり、光治さんと奥さんの千景さんは……」 間宮はもうすっかり回復していた。 「自殺。そして、貢君だけが生き残った。探し出して新宿の施設から連れて来たみたいな事を松原さんに言っていたそうだから……」 「そうかあ。でも、磯貝さんが犯人で松原君と顔見知りだったのなら、駿哉の郵便受けに予告状が投げ入れられていたのも、部屋の中から鍵や予告状が消えていたのも納得できる」 「合鍵を使ったのね」 「その合鍵は恐らく、松原君から貰ったもの。そして、これで、どうして石渡検事の静岡行きが犯人に分かって殺害されたのか説明が付くわよね」 「それはそうよね、自分の母親の実家だもの、いつでも自由に帰れるんだから……」 間宮は倉内の言葉に頷き話を続ける。 「多分、あの日はたまたま実家に帰ったのよ、バイクで……そうしたら家の中に入る石渡検事を偶然に見掛けた」 「でも、御主人の松原さんはその事は何も知らなかったみたいだったじゃない」 「そうよねぇ……」 間宮の声を最後に話は途切れ2人は考え込む。そして……… 「もしかしたら店番をしていた和葉ちゃんに『誰か』を聞いたんじゃない?」 と間宮から声が出る。 「成る程。で、石渡検事の素性を知って慌て殺害する計画を立てるけど、バイクじゃ間に合わないから同じ新幹線で尾行。そして東京に戻った?」 「うん。それで、私達が訪ねた日に松原さんの奥さんが『鍵が見つからない』って言ってたのは、あの日、磯貝さんが持ち出していたから」 「じゃ、石渡検事の遺体にあったあの鍵は……」 「松原君の首に掛けられてあった事からすると……取り壊された長沢さんの家の鍵!!」 間宮は倉内の顔を見つつ、自分達が草岡の家にいる事も忘れ、声を張り上げる。
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