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〈1〉
~挿入歌絶望~
× × × ×
どうして私は生まれてきたのだろうか。腐敗した社会に翻弄され続け、堕落した人生への薄い架け橋を辿るだけの生き様に意味はない。
一歩、道を逸れると同士にまみれた集団の一員になる。そんな世界に飽き飽きした時、私にとって最後の選択は“死”だった。
「信じて……」
あの男の言葉を鵜呑みにした結果だろうか。結局、信じられるものなんて存在しなかった。
それでも、僅かな希望の芽を摘まれた弱い私に、黒い陰が付け込んだ。
そんなに弱者を虐めて楽しいのか。嘲笑にも似た諦めの笑みを浮かべる毎日に疲れた。
だから私は決意した。
私を含む弱者とされる立場の人間が悪いのか、はたまた強者とされる陰が悪いのか……判断を下す人種になろう。
決して、上から見下ろす支配者にはならない。私はワタシだ! 弱者に手を差し伸べ、強者に鉄槌を与えて何が悪い。新しい自分を見つけ、相応しい世界を創造しようじゃないか。
そう思った矢先だ。
彼は私を殺した。残されたワタシは絶望した。裏切りから生じる絶望に復讐の念を抱くこともなく、ただ呆れた。もうこの世に未練はない。いっそのこと、足枷を外し自由になろう。
地面にぶつかる瞬間――最後に見た景色は、空色だった――。
× × × ×
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