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店主がエスプレッソを2つ、こちらに運んで来た時には、当然のことながら鈴鹿さんは紅潮していた。勘違いがこれほどまでに恐ろしいものとは。
「先程は失礼しました。もう、何て謝罪すれば良いのやら」
「いえいえ、僕も勘違いは良くありますから。そんなに気を落とさないでください」
「はい、ごめんなさい」
そもそも、神無月空という名の大学教授が存在したとは……新しい発見だ。なかなか面白い。何かに使えるかもしれない。しっかりと記憶しておこう。
「ところで。神無月さんは、どのようなお仕事を?」
――ブハッ! 危うくエスプレッソをぶちまけるところだった。さて、どう答えるべきか。
「えーっと、ですね。俗に言う事件的なアレを調査したり、人探しをしたりする職業です」
「あっ、警察関係の方でしたか!」
残念、非常に惜しい。
「ちょっと違いますね」
「では、弁護士さん? じゃないですね。まさか……」
漸く気付いたか。ここまでくる道のりは決して近くはなかったはず。
「浮気調査の人! ですか?」
何でそうなる。あまりにも突拍子のない答えに、僕は苦笑いするしかなかった。美人だがしかし、どこか抜けている。そんな彼女にますます心惹かれたことは、言うまでもない。
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