ワタシ絶望≠恋心

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「いえ、探偵っぽい仕事を」    彼女はハッと息を飲んだ。その表情は僕が探偵であることの驚きであって、決して僕の存在を知っていたという訳ではない。むしろ、何かしらの不安の影を見せていた。   「探偵さんでしたか。今時珍しい……ですよね?」   「えぇ、確かに珍しいです」    なんだろう。やはり彼女の表情に曇りが表れている。   「鈴鹿さんは?」    しばしの沈黙した空気に耐えきれず、僕はそう聞いた。彼女は我に返り、漸くもとの表情へと戻る。   「あっ、私ですか? 一応、生物の研究者を、と言ってもまだまだ卵ですが。似合わないでしょ?」    彼女はクスッと笑う。その笑みに偽りは隠されていない。   「意外ですね。あっ、いや別に変な意味ではなく。僕には未知の世界です」   「ある意味で“変わり者”ってよく言われます。そう言えば、神無月さんは“デリオシプヒス”って御存知ですか? ヤマラマニーヤの亜種なんですが」    デリオシプヒス? ヤマラマニーヤ? 全く聞いたことのない名前だ。珍しい生物なのだろうか。   「いえ、残念ながら」    エスプレッソを飲み終えた彼女の表情が、一層真剣になった。研究者の性なのだろうか。何やら教えたくて堪らない、といった顔をしている。  
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