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事件現場は廃墟と化したマンションの1階で、奥までブルーシートに覆われていた。
なんとなく気分が悪くなる。未だに血の臭いが漂っているかのような、錯覚に陥りそうだ。
「ここに俯せで倒れていました。例によって、遺体の中身は空っぽでした」
「一概に空っぽと言っても、どの程度の中身が残っていたんですか?」
「えーっとですね。鑑識に確認しないと詳細はわからないのですが、骨以外が抜き取られていたそうです。血や臓器までもが」
なるほど。しかし、本当に悪趣味な事件だ。犯人は何のために、遺体をこのような状態にするのか。宗教的な儀式だろうか。それとも、余程の怨みから生じた行動なのか……。
「七瀬さん、他に証拠となるようなものは?」
「残念ながら」
「そうですか。あとは、被害者の身元や、詳しい内容を教えていただけますか?」
「はい……あっ、勿論、口外しないでくださいね」
メモを取り出し、彼の説明を書き取る。
被害者の名前は伏せられたが、年齢は41歳の女性。大学の助教授をしていると言う。身長は156センチメートル。体重は“推定”45キログラム。中身が抜かれていた為、推定でしかないのだ。
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